MC戦記(第1戦) 6

スターティングゲートの前、ずらり横一列に並んだマシンの左端に、緑のKXを寄せる。チェッカーを受けて、前の組のフルサイズマシンが次々にパドックへ帰っていくと・・・ひとつ目のテーブルトップジャンプの手前に、ゲートと平行して、黄色のビニールテープが張られる。公式予選の1周目は、レースのオープニングラップと同じように、1周目だけの第1コーナーが現れる。さらに左、その「第1コーナー」へ一番外側から入る位置に、#21のサイドゼッケンが見えた。もう一度視線を正面に戻すと、MCFAJのジャケットを羽織った係員が、丸めた日章旗を棒切れのようにグルグル振り回している。それに合わせて右端から1台、また1台とコースに散らばっていった。

昨夏以来のレースは、コースレイアウトが新しくなってから初めてのレース。瞳を閉じて、ひとつ深呼吸して、息を整える。まぶたの奥には、もう昔のレイアウトが浮かんで来なかった。左足でシフトペダルを踏み込み、両脚をだらりとステップの前に垂らす。本番前、一度きりのスタート練習。はたして53個の“歯”は、吉と出るか凶と出るか――とは言え、純正の51丁のリヤスプロケットはガレージに置きっぱなし。凶となっても、そのまま走るしかないけれど――全開で吹け上がるエンジン回転を、左の人差し指一本で解き放つ。思ったとおりの勢いで思った分だけ前に出ると、馴染んだ感覚でKX85-Ⅱが加速していく。どうやら歯数は・・・吉と出たようだ。

<つづく>