雪見メンテ~日曜日編 2/2

<2/11の続き>

シリンダヘッドに付いた「バルブ」を動かすための「カムシャフト」と「ロッカーアーム」。その「カムシャフト」を動かすために、クランクケースからは「カムチェーン」が延び、シリンダヘッドの左端で「カムスプロケット」に掛けられる。カムシャフトには“合わせマーク”が刻まれていて、カムスプロケットのケガキ線を、そのマークに合わせて取り付けなくてはいけない。その前に、クランクケースの右端で、クランクシャフトを圧縮上死点に固定しておくことも忘れてはいけない。エンジンの左上と右下、対角線の上にある2か所で位置合わせをしてから組み付けないと・・・上下するピストンにバルブが衝突することになる。2ストのKXには見られない数多の部品と、“締付トルク”だけじゃない面倒な調整の数々。おまけに、うっかり気を許して作業をしていると、クランクケースの中にカムチェーンを落としてしまいそうだから厄介だ。左のくすり指と親指でカムチェーンをはさみ、クランクシャフトについたプライマリドライブギヤを右手に握った工具で押さえながら、カムスプロケットにカムチェーンを回して合わせマークにケガキ線を合わせるようにする。ニコ・ロビンの能力が欲しくなるのは、いつもこんな時だ。スプロケットの歯を二度、三度と左右に一コマずつずらして、ようやく2か所の位置合わせがピタリと合った。共回りしないように、今度も右手でクランクシャフトを押さえながら左手でトルクレンチを操り、カムスプロケットの取り付けボルトを指定されたトルクで締めつける。そして、シリンダヘッドカバーを10N・mの締付トルクで固定したところで、ガレージの窓から外の色を眺めると、すっかり真っ黒になっていた。ラジエターとキャブレターが、ガレージの中、土曜日の朝のまま置き去りにされてしまう。でも、あともう少し。“スタッドボルト折れ”から始まったオーバーホールも、ようやく先が見えてきた。あとは素直にエンジンがかかることを・・・祈るだけだ。