りょうもうにて~前編~

北千住駅の浅草口から、小走りでコンコースをすり抜けていく。左腕を持ち上げて、G-SHOCKの針を確認すると、長針がもう23分を指そうとしている。常磐線を1本乗り損なって、あきらめていたはずなのに・・・なぜかそのまま、互い違いに並ぶ背中を交わして、北寄りの階段を駆け降りる。プラットホームにあふれる整列乗車の後ろを、カラダを斜にして、北端にある“特急専用ホーム”へと急ぐ。自動券売機の前にはまだ数人が固まっていて、肩幅のがっしりした長身の駅員さんに「23分発のりょうもうにお乗りですか?」と急かされている。もしかしたら・・・と、その駅員さんに「まだ大丈夫ですか?」と訊ねてみると、にこりと笑って、窓口に手を向ける。どうやら間に合うらしい。東武公までの500円を払って、乗車券を受け取り、専用ホームに駆けていく。「一番手前から乗ってください!」、肩越しに聞こえた大きな声に驚きながら、言われたとおり、6号車の後部ドアから停まっていた車両に乗り込む。「最終乗車完了!」のアナウンスがしたと思ったら、ドアが閉まり、ゆっくりとりょうもうが動き出した。