激走・三月までの~ひと月ぶりの練習編~2

<3/2の続き>

この季節、いつもなら白く乾いて見えるコースは、雨をたっぷり吸いこみ、赤茶けた土色に沈んでいた。北風の舞うパドックにも降る光はなくて、すっかり平らに均されたミニコースの端まで、濃い色が続いている。「tasakiさん、待ちくたびれてますよー」、受付でひと月ぶりにsaitoさんの声を聞く。ただ、それを聞くまでもなく、取手の街中を走っているときにkyoheiくんからは電話が入っていた。「自分を入れて、まだ3台しか・・・」と。

先週、関東選手権が終わって、予報どおりに小雨まじりの朝。何も無理して走る理由は見つからない――「今日しか休みが取れない」と言うkyoheiくんとか、「組み上げたエンジンがちゃんと動くか心配」と言うryoとか、「そろそろ乗っておかないと・・・」と気の急くワタシとかをのぞけば――そう思いながら走行申込書に汚い字を書きつけていると、「あれ、sayuriさんじゃない?」と、ryoがつぶやいた。

ボールペンを握る右手を止めて、顔を上げたフロントガラス越し。シルバーグレーのキャラバンと、その横に降ろされたCRF150RⅡが目に映った。「そうそう、“ざりまま”も来てますよ!」と、同じ方へsaitoさんもふり返る。ゼッケンのないカノジョのCRFには、まっさらのデカールがきれいに貼り付けられていた。

<つづく>