激走・三月までの~MC第3戦編~

春の光に土埃が舞い上がり、ryoとiguchi師匠と、表彰台に立つTEAMナノハナの二人が眩しく映る。チームメイトの活躍が、晴れがましくもあり、やっぱり羨ましくもある。MX408最後のレースは、指折り数えるまでもなく、すぐにやってきた。そして、終わってみて、その乾いた光の中に思う。おととい、座ったままでも本気で走れるように、本気で練習しておけばよかった。そして「本気で勝ちにいくつもりで走ればよかった」・・・。不覚にも「最後だから、完走すればいい」なんて感傷的になっていたことが、今になって悔やまれる。レースはレース、出るからには理由はどうあれ、勝つことにこだわらないと・・・。

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あれから2週間が過ぎて・・・その朝はシロとネロを連れて小走りしても、左ひざは何ともない――それがよくなかった。レース前、ひと月ぶりに見えるiguchi師匠とokano師匠は、同じN-150クラスを走る好敵手。その二人から遅れること数分、ずっと先に走り出しているryoのCRF150RⅡの破裂音が坂を下ってくる。触発されないわけがない。

最初の2、3周をおとなしく回って、痛みのでない左ひざに安心しきった4周目。緩い高速の左コーナーからバックストレートへ、全開にしてすぐのことだった――路面をえぐるように深く刻まれたブレーキングギャップにKXのリヤショックが簡単に根を上げる。瞬時にひずんだ車体、底付きしたサスペンションは支えきれず、細いフレームが路面にぶつかる。ステップに立ち上がっていた両脚も、その衝撃に堪えきれず“く”の字に力なく折れ曲がり、2週間ずっと動かしていない角度に、鈍い音がしたと思ったら痛みとしびれでステップから左脚が離れてしまった。

そのまま勢いを失ったKXが、スネークの手前、右バンクの外へはみ出ていく。伸ばされた左のつま先が弱々しく大地を踏み、KXのハンドルに突っ伏して、足下から這い上がってくる痛みにこらえる。そこからはもう、走るべきではなかった――#41、KX85-ⅡのMX408最終レースは二日前のこの日、あっさりと折れてしまった。

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リザルトは18位。それも出走台数18台だから、しっかり最下位だ。どのコーナーの進入でも、長いバックストレートでも、どっかとシートに腰を着けたまま。ジャンプというジャンプはすべて、路面からタイヤが離れてしまわないように、斜面で止まってしまうくらいまで車速を落として――ryoとiguchi師匠、チームメイトの見慣れたCRF150RⅡに周回遅れにされたところで、ようやくチェッカーをくぐる。“DNS”にも、“DNF”にもしなかったことだけ、ほめてやりたいけど・・・初めから勝つ気もなくスターティンググリッドに並んだことに、やはり悔いが残る。二度とは来ない最後の一日に、悔しさが募る。これが次のコース、次のレースへとつながってくれればいいのだけれど・・・それには、まだ時間がかかりそうだ。