激走・三月までの~雨の三十日編~2

<3/30の続き>

「最後にふさわしく、雨風ともに強くなる予報ですが――」と、雨雲を追いやるように、ひときわ高く声を張るsaitoさん。それを聞いて、Bongoの兄弟車“vanett”の中、少しふっくらとした頬でmachi-sanが笑う。ずっと会えないでいたけど、この日を外すことはしなかった。muraのことを知る、今では少ない一人。KLX250で笑っていた頃と、CRF150RⅡを走らせている今と、machi-sanは変わらない。ひと回り大きく映るのは、“荒稼ぎ”して美味しいものをたらふく食べているのだろうか・・・。雨にも負けずryoよりも先にコースへ飛び出していって、いつものように“あっという間”にパドックに帰ってくると、「おもしろい!やばいよ」と、にこやかに話し出す。machi-sanがいてくれたから、ryoもワタシも、MX408を「ホームコース」と呼べるようになった――そんな想いを胸にKX85-Ⅱにまたがり、地面に着けた左膝が不用意に動かないように気をつけながら、キックペダルを静かに踏み下ろす。湿気った空気に、2ストの乾いた音が広がっていく。雨は止んでいた。

雨は降ったり止んだりを繰り返し、午後になって、コースにもパドックにも水たまりが大きくなりはじめていた。最後の日、酔狂な奴らだけが集まって、走りにくいはずなのにコースの中は案外にぎわっている。3つのクラスは、フルサイズの速い組と普通の組に、「50、65、110」のミニモト組の3つ。85/150のアダルト4人組は、フルサイズの普通組と一緒に走らされている。その中を楽しく遊んでいられるのは、子どもとryoぐらいなもの、saitoさんに頼み込むと、早々にアナウンスが入った。「次は50、65、110・・・と、怪我人クラス。リハビリ枠の走行になります」、ほとんど座って走るワタシに向かって、スピーカーからの声が笑っている。初めは取っつきにくい印象だった“コース管理人”のsaitoさん。手塩にかけたMX408からみんながいなくなってしまうのは、きっと悲しいに違いない。それでも今日、集まってくれた人たちに、明るい声をかけていく――コースでは見ることのできない夏フェスでの出来事で、それまでの距離がグンと縮まったっけ・・・。

<つづく>