幸せな日曜日

着古した綿のTシャツに薄手のパーカーを羽織って、袖をひじまでまくり上げる。素肌に空から陽射しが注ぎ、水を張った田んぼを渡る風が、その上をさらりとなでていく。国道や、通りの激しい県道を避けて、小さな稲が揺れる農道へと折れてつないでいれば、止まらないバイクの上は、光と風の楽園になる。GROMの小径ホイールが細かくカーブを曲がるたびに、光がゆらめき、戻したスロットルをひねる瞬間に心ときめく。「暑くもなく寒くもない」日は、1年に一度か二度、おだやかにやってくる。その日に、うまいことバイクに乗っていられれば、いつまでも、どこまでも走っていたいと思う。バイク乗りなんて、そんな生き物だ。午後になっても、光と風が爽やかにからむ日曜日、こんな幸せな日曜日があるから、いつまでたってもバイクは止められない。空には光が疾り、真正面から受ける乾いた風が、後ろに流れていく――ただ、それが続くだけ。それでもこの感覚は、いつまでも忘れないでいたい。