初夏の軽井沢 6

<5/26の続き>

――スタート5秒前。大きな黒い字で“5”と書かれたボードを脇にたたんで、コーススタッフが正面から横に駆け出す。さびが浮いてくすんだ銀色のバーではなくて、そのバーを支えているストッパーをにらみつけながら、左の中指に小さなエンジンのうなりを感じる。5秒を過ぎて・・・今日のスターターは、なかなか焦らしてくれる。あと少しで集中力が途切れてしまいそうな瞬間、ストッパーの動きに両手が“反射”した。フロントもリヤも、タイヤがまっすぐに土をつかみ、出だしはうまくいった・・・と思ったのもつかの間、2速にシフトレバーを蹴り上げたとたん、両脇の2台に挟まれた。左から迫ってきたのは#21、ryoのCRFだ。一瞬だけ気後れしたワタシとKXを呑み込むように、先頭集団の巻き上げる褐色の砂塵が広く長い直線を覆い隠し、見えない右の直角コーナーを、何とか見ようとして・・・あやうく曲がり損ねそうになる。第2集団の真ん中あたり、左ヒザも気にならないうちにレースが始まった。

<つづく>