バイク乗りじゃなかったら、

この空の色も、光って見えるだろうか・・・。

どこまでも平たく、つかみどころのない灰色は、気まぐれに吹きつける風に乗せて、大きな雨粒をバラバラとまき散らしている。雨の季節。白く煙るオンロードは、タイヤが滑りやしないかと気になるばかりだし、ぐちゃぐちゃに緩んだオフロードは、斜めのまま加速を始めて、ジャンプひとつもまともに跳びだせない。濡れそぼつカラダでは、気分も寒くなる一方――どちらのマシンも、ガレージから出る機会が少なくなる。仕方なく走り出して、“やぶれかぶれ”にでもなれば、少しは気持ちも乗ってくるけど・・・それはMな気分が高揚して、ヘンなアドレナリンが出てくるだけ。心の底から「楽しくて、楽しくて」と思ったことは、ほとんどない。午後から夜に向かって雨脚が強くなり、雨の季節のはじまりは、いつもこんな風にどしゃ降りな気がする。

出窓のガラスをバチバチ叩く雨は、明日の朝まで続くらしい。覚悟を決めて雨に歌うのも悪くはないけど・・・どうしても乗らなきゃいけない訳じゃない。やはり濡れたアスファルトは、ガラスの内から眺めるほうがいい。