初夏の軽井沢 11

たいていのジャンプは、臆病風に吹かれているだけで、案外気持ちで持っていけるもの。1周目から、てっぺんの高いところにうまく跳び乗れたし、ヒザからヘンな音が聞こえることもない。何とか勝負になりそうだ。弾むようにして反対の斜面を下ると、続くのは鋭く尖った左コーナー。外側に右脚がくるから、踏ん張りが利くのはいいけれど、すべる車体からポンッと左脚を着いて、立て直すことはできない・・・だから、マシンは立ったまま。荒っぽく突っ込めないのが、ちょっと歯がゆい。そして、立ち上がる先には、いびつなエッジをもつ2連+シングル・・・いや、腕の立つ、そうSEの上位を走る連中は、3つ“まとめて”しまうから、“3連”と呼ぶべきなのかもしれない。どちらにしても、アウトバンクから思いっきり加速していかなければ、ワタシの腕では“2つ”すらまとめられない。どうせできないのなら、ここは我慢のインベタ。“らしくない”、こぢんまりとした走りで小さく立ち上がり、不格好に上下してデコボコをいなしていく。ここをスタンディングで超えていくだけでも、今のヒザには大した仕事になる。ごつごつした感触の直線は、すぐ右に、今度は2連ジャンプが2つ置かれた、倍の長さの直線へと折り返す。

先週は、すべての周回でなめていた最初の2連に向かい、半クラッチを当てられたKXが挑んでいく――跳びきれなくてもかまわない、ただ、ここでブレーキを締めていては、間違いなく差は開いてしまう。一瞬、息をついた2ストエンジンが、本気を出し始める前に、低い斜面にフロントタイヤがかかる。そのフロントが地面を離れる瞬間、両膝をぐっと曲げてリヤサスペンションを沈めて、そのまま上へと伸び上がる。何とか2つ目のコブの先にフロントタイヤが落ちて、KXがまっすぐに加速を続ける。次の2コブは、間隔が広め。少し弱気な自分が右手を緩めてしまい・・・今度はショート、斜面にフロントからぶつかり、両腕に力が入る。続けてすぐに両膝が曲がり、不意にコブを跳び越えてしまうと・・・次の左コーナーのインに着きはぐれる。でもここは、コースで一番大外を回りやすいところ。アウトから荒れた長めのストレートを全開で駆け抜けると、小さな最終コーナーが待っている。フィニッシュのテーブルトップを気分よく跳ぶならアウト、レースを意識するならインと、狭いカーブも気分次第。最後の一度だけ、インを回ることにしたけど・・・気分よく跳び上がって、次の周回に気持ちをつないでいくのがいい。

<つづく>