初夏の軽井沢 12

途中、出遅れたらしい黄色いゼッケンの連中に交わされたものの、MX408最後のレースのときとは違って、何とか流れに乗れている。序盤で一人、置いてきぼりを喰わされることなく、緊張のうちにも嬉々として、土埃にむせびながら周回を続ける。左ヒザをかまうのも忘れて、ほとんど2ヶ月ぶりに本気でコーナーを攻める。数周が過ぎてようやく気分が盛り上がってくると、悲しいかな、今度は息が上がってきた。やはり走り込みは、全然足りていない・・・。車体を貫くような衝撃を受け止めてきた左ヒザにも、疲れがみえはじめる。少しずつニーグリップが甘くなり、ジャンプの着地でシートに腰が落ちるようになる。ギャップを越えているわけでもないのに、両肩が大きく上下して、ハンドルが左右に振られる・・・。徐々に詰めてくる150が2台、背中に排気音をぶつけてきた。ざりぱぱが最終コーナーで突きだしてくれた“V”サインは、2番手じゃなくて、「あと2周、ガンバレ!」だった。L1を期待していた瞳に、フィニッシュのテーブルトップがかすんで映る。その2周が遠かった。そして・・・奥から戻ってきて、ステップアップに跳び、頂に着地した瞬間だ。シュラウドから離れた左ヒザが、グキッと音を上げて、カラダが左に崩れた。

<つづく>