梅雨の晴れ間に~MCオフビ編~

「うーん・・・。ヒザの内側、少し石灰化してますね。ここです」

微笑みも憂いも含まない澄んだ瞳で、女医さんのすらりとした人差し指が、白いガスのような小さな影を指している。

「はあ」

素人の目には、ただのぼやけたレントゲン写真にしか映らない。我ながらきれいな大腿骨をしていると感心していたら、

「内側側副靭帯と・・・半月版の損傷も疑われますので、MRIを撮ってきてもらえますか。予約はこちらで入れますので。MRIの結果次第ですけど、場合によっては手術が必要かもしれません」

淡々とそれだけを告げると、すぐに目の前から姿を消して、代わりに先生よりも若くて太めな看護師さんが現れて・・・さっそく近くの専門機関に予約の電話を入れてくれた。

「半月版損傷」「MRI」「手術」――丸一日過ぎても、左ヒザからふくらはぎにかけてボワッと膨らんだまま。腫れも引かず、ヒザも曲げられなくて、ちょっと診てもらって、湿布薬でも処方してもらおうかと軽い気持ちで開いた整形外科の扉は、思いがけず、次の重たい扉への入り口になってしまった・・・。

<つづく>