梅雨の晴れ間に~MCオフビ編~7

<6/26の続き>

シングル、ダブル、ロング。3つのジャンプを跳び越えているうちに、赤いテールカウルと、くぐもった破裂音が至近距離になる。ゆっくり下りながら大きく左に回ると、フィニッシュのキャメルジャンプに向かってグイッと角度をつける。ここも外側の“一本ライン”、スプリンクラーの無粋な散水と、砂利の吹き溜まりで、内側は危ないぐらいによくすべる。ただ・・・せっかくの広いコース幅、すべるだけで溝が刻まれているわけじゃなし。追いかけるのに、使わない手は無い。一瞬早くバンクから離れ、前を行くCRF150RⅡの左側にKX85-Ⅱのフロントタイヤを寄せていく。不自然に出来上がった水たまりを避けて加速すると・・・その先の斜面を先に飛び上がったのは、緑色の方だった。

抜くのに夢中で、フィニッシュラインを越えて跳び出した先を忘れていた。斜面がない。もう何度目かのフルボトムで、左ヒザが少しぐらつく。跳びきるなんて・・・と思わせる長さのテーブルトップを跳び上がると、もう1台、赤いマシンが小さい切り返しに消えていった。スロットルをつかんだ右手にチカラをこめて、ぎらつく陽射しと一緒になって低く漂う褐色の煙を蹴散らし、きつい右カーブへ突っ込んでいく。苦手な“右”、そして踏ん張りきれない左脚――それでも、すぐに左に折り返し、バレそうな車体をふらふらさせながら、ワダチが散らばる直線へとにかく加速する。浮き上がるリヤタイヤに、第1コーナーはまったくインでは回れない。第4コーナーを恐々と回り終えて、やっと本気を出せる。さっきまでと同じ展開だ。

今度のCRF150RⅡは、tanakaのおいちゃん。紳士的な風貌からは想像できないくらいに、寄せては逃げる絶妙な走りを見せる。2周ほど真後ろに着いて、何度フロントタイヤをちらつかせても、まったくお構いなし。簡単に前に出せてはくれないらしい。おまけに少しブレ始めたKXを尻目に、静かに駆けていく。すり鉢から上ったリズムセクションも、一番右の平らなところを選んで走るあたり、一日の長を感じる。ただ、感心してばかりもいられない。シングル、ダブル、ロングの3つを跳び越えて食い下がり、最後の左コーナーで勝負を“仕掛ける”。今度は入り口から1本内側のラインをたどって、前をうかがう。3つのジャンプで詰めておいた間隔が、小さく回る分、さらに短くなって・・・黒く湿った土をKXが蹴散らした時だった・・・。

さらに傾けようと、右ヒザをシュラウドにかぶせたせいか。それともスロットルを早くに開けすぎたせいか――とにかく疲れと焦りで、それまでとは違う動きを見せたワタシに、2スト85は敏感だった。リヤタイヤが外に流れ、思っていた角度を越えてマシンが倒れこむ。瞬間、カラダが勝手に反応して・・・ステップから軽く離していた左脚が、ガツンと路面と蹴り上げた。コースサイドで見ていてくれたざりぱぱにも、その音が聞こえたかと思うくらいの痛みに、ゴーグルの奥の瞳がゆがむ。元に戻ったKXが軽やかにフィニッシュジャンプを跳んで、CRFの左横に並んだのもつかの間・・・左ヒザが激しく痛み、脚がしばらくステップに帰ってこなくなった。

<つづく>