梅雨の晴れ間に~MCオフビ編~完

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午後のけだるさに、ゆらぎのあるピアノの旋律が混ざりあって・・・メガネをかけた方のレントゲン技師に「終わりましたよ」と声を掛けられるまで、現を無くして夢を見ていた。「MRI」を経験済みのryoが言ったとおり――まばゆい光にあふれた過去が、ほの暗い検査室へと、ゆっくり戻っていく。左脚を引きずるようにしてジュラルミンの扉の外へ出ると、西に向いたガラス窓が橙色に明るく濁っていた。

それから、ちょうど5日。noriko先生の診たては「骨挫傷」。折れているわけではないけど、その一歩手前で、あまりよくない状態。前十字靭帯も「するめいか」のような状態に、かさついて、ささくれ立っているらしい・・・。「1度や2度じゃないわよね?」、そう言われて指折り数えるワタシに、あきれた顔を見せる。で、どうすればいいのか。先生の小さな瞳を見つめなおすと、「10日分、お薬出しておきますから。それで炎症を抑えながら・・・経過観察していきましょう」。“経過観察”なんていう、割にあっさりした診断を一息に呑み込んで・・・栗色の引き戸を開けて、静かに診察室を出ていく。受付で220円を支払い、エレベータで1階まで降りて、そこから外の通りに踏み出すと・・・夏の太陽がアスファルトに跳ね返っていた。