想い出の地に 1

夜空に浮かぶ、真っ白な半月。その周りには、いくつもの星が散り散りにきらめいていた・・・。

そんな月夜がくれた朝、雲は途切れ途切れに薄く張り、うっすら顔をのぞかせた青色から、あきらめていた光があふれ出る。貴重な梅雨の晴れ間、青々とした稲穂の向こうに並んだ家々のベランダには、ふとんが何枚もかけられ、色とりどりの洗濯物が風にそよいでいる。昨日、KXが組み上がっていたら・・・ふらっと日帰りツーリングにでも出られたのに・・・gromに代わって軽トラに、ryoと古タイヤとKXのロッカーアームを積み込んで、ひさしぶりにハンドルを東に向けて走り出す。全開にした窓から吹き込む風は、口惜しいくらい心地よく、さらりと素肌をすり抜けていった。

<つづく>