想い出の地に 2

<7/6の続き>

3坪の空間には、前後輪が外されたKX85-Ⅱの他に、dukeとCRFが収まっている。外は雨、散らばった工具と2台のバイクに挟まれて、KXの周りを動くのにも半身を捻らなければいけないくらい。ヘンな格好で左脚を着いて、ヒザがグラリとあらぬ方向に曲がってしまってはたまらない。おまけに腰まで痛いから、ずっとしゃがんだまま、マシンをいじるのは・・・憂鬱な時間でしかなくなる。前後の“脚”を、そのまま付けてしまうのは、いかにも簡単だけど・・・いつもは決まって、ステムやリンクにもグリスをくれてやっている。手狭なガレージの中、痛むカラダを駆使して追加の整備をするか、それとも黙って見過ごしてしまおうか・・・めずらしく“天使”と“悪魔”がせめぎあい、上半身裸の短パン姿でKXに向かって仁王立ち。しばらく待っていても勝敗が決することはなく、それなら「面倒の少ないステムだけでも・・・」と、工具箱から32MMのソケットをつまみ出し、半身になってKXの前に回ってみる。その背中に、“時代遅れ”のフロントフェンダーが小さく触れて、マシンを揺らしていた。

<つづく>