想い出の地に 6

巨体を横たえるハーレーダビッドソンが居なくなってから、すっかり橙色に染められた表の入口。プラスチックとゴムが混じりあった、“新車”の匂いをすり抜けていくと、そこは、原色に彩られたモトクロスジャージが天井に届くまで貼り付けられた、いつものwestwood。ちっさなお姉さんが、いつものようににこやかに迎えてくれる。ただ、愛機KXを走れるようにしなくてはいけないからか・・・店の中をぐるり巡ってみても、瞳に映る用品が記憶に入り込んでこない。それでも気になる“他のコト”を、もっと訊いてみたかったのに、kuboちゃんはパソコンの前にずっと座ったまま。ちっさなお姉さんはお客さんの相手をしていて、saitoさんの姿は、どこにも見えなかった・・・。「また来るね」と、いつもの声をかけて、もう一度橙色をくぐり抜けていく。ryoの運転で動き始めた軽トラは、しかし来た道を戻らず、反対方向にウインカーを落して広いアスファルトにすべり出ていった・・・。

<つづく>