750strike

<7/24の続き>

峠は切通しではなく、のどかに堂々としていて、傍らの松の木も気持ちよく枝を伸ばしている。その枝がアスファルトに濃い影を落し、道は照り返しがまぶしい中、左右に切り返しを始めて一気に高度を下げていく。反対車線の路肩すれすれを、白髪まじりが夏空にあえぐように、両脚へ交互にチカラをこめながら、カラダを揺らし上を目指していた。うるさいほどの原色につつまれたウェアに、少し照れた視線を向けていると、隣でryoも決まり悪そうに、頬をゆがめて見せた。3つ、4つカーブを抜けて菅平への分岐を過ぎると、道は伸びやかな直線になって、須坂と東御の間を東から西に割って走るようになる。路肩に立つバイク乗りが、レインウエアを引き剥がすように脱いでいる姿がバックミラーに消えた。空は明るく広がり、もう雨が降ることもなさそうだ。「菅平口」から道は南北に分かれ、上州街道の名を持つ国道144号線にのって南に下る。フロントガラスいっぱいに陽射しがあふれて、思わずサンバイザーをひっくり返す。真田ゆかりの上田城址に寄るか、慣れた県道を使って小諸に抜けるか――ryoに訊ねたら、風切り音に消されて、返事はわからなかった。

「横沢」の分岐はYの字。県道3号線は、左に少し上って山すそを走る。信号をひとまず左に折れて、少し走った先の道端にbongoを乗り入れる。退屈そうなryoと、ここで運転を交代。上田散策は次にして、そのまま緑に染まる県道をryoは選んだ。しばらく行くと上信越道と併走するこの県道を、最近走ったのは・・・まだmuraが元気だった頃の話。すいぶん時間が経ってしまった。hideさんとmuraと3人、抜きつ抜かれつの走りを楽しんだ記憶の上を、今日はryoがうれしそうにbongoのハンドルをさばいていく。あの日、山側のブラインドカーブに、誰よりも早く飛び込んでいったのは、hideさんのbuell lightning。そのブレーキングポイントを信じて、ワタシのmonster900が林の陰に消えていく。その後ろ、ほとんどストレート1本分離れたところから、muraの4気筒マシン、bandit1200が追いかけてくる。結局、1200ccと900ccの2気筒に散々な目に合わされた彼が、奇天烈な2気筒マシン“laverda 750strike”を手に入れたのは、ツーリングから帰ってすぐのことだった。そのハチャメチャな作りの2気筒は、2ストマシンを思わせる尖り具合で・・・muraとの相性は、けして良くはなかった・・・。