Riding high!

ざりままが手にしたパラソルの下、遠く離れた第1コーナーに視線を流していく。程よく湿った褐色の直線、小さな水たまりに陽射しが跳ね返る。目の前の壁を右に避けて上るカーブの先には、薄雲にさえぎられた浅間山の裾野が広がっている。この数分後、思いがけないスタートになることを・・・ryoだけは気づいていたらしい。昔、ひそかな優越だった“霊感”らしきものは、すっかりこいつに持っていかれてしまった。

SE150の連中にチェッカーが振られ始め、ざりままがパラソルとともに後ろに下がる。コーススタッフが丸めた黄旗を右手でぐるぐると回し、エンジンスタートを合図する。ブレストガードの上から、今度はざりぱぱが軽くこぶしを当てる。ゆっくりとヘルメットを上下させてから前に向き直ると、ゆるめに締め直したニーブレースのおかげで、すっかりしびれの取れた左脚を地面に付けて、KX85-Ⅱのキックペダルを引き出す。

一番高くなるところで右足を引っ掛けて、ペダルを躊躇なく、一気に踏みおろす。少し捻っていた右手に2ストローク85ccが応え、カン高い排気音は空に突き抜け、心臓の音が聞こえてくる。二度目の軽井沢。ざりぱぱ&ざりまま、HRのみんなのおかげで、最高の気分でグリッドに収まったはずなのに・・・。

<つづく>