来間大橋 2/2

その真ん中を背に、ゆるやかな弧が白くなめらかに海を這う。空の青は光に溶け出し、サンゴ礁はガラスに包まれたように、そのままの色に輝いている。誰もいない砂浜から伸びたアスファルトが、細い線になって対岸へと届く。宮古島来間島にかかる1690mの舗装路は、200mm×100mmの対角線をなして、雑誌の右隅に真夏を宿していた――。

仕事場の机の引き出しには、“石垣・宮古”と太く黄色い蛍光文字の躍った旅行雑誌が、一番手前に突っ込まれている。取引先のダイビング女子(と言うには少しトウが立っている)が貸してくれた「るるぶ」。海上をながれるゆたかな大橋。そこからの色に触れて、匂いを感じて、風を見つめたい。この橋を走るためだけに――馬上で過ごした少年は、いつまで経っても馬上のまま、ひとつも変わらない。