Riding high! 3

<8/5の続き>

それでもまだ、手を伸ばせば触れそうな背中を見つめ、左足がシフトペダルを蹴り上げる。2速。握り直した右手が、スロットルを動かなくなるまで締め上げて、第1コーナーに視線を戻したときだった――。ゴーグルレンズの右隅に、倒れたマシンから引き剥がされて横たわるライダーが映りこんだ。ペパーミントグリーンとチョコレートブラウンの2トーンは、少し旧いthorのウェア。CRF150RⅡには黄色のバックグラウンドと黒ゼッケン――混走になったJ150クラスの一人だ。ステップに乗せた左足を少し踏みしめるようにして、ハンドルバーを軽く左に倒す。まっすぐ前に進む力が勝るKXは、スターティングゲート1台分くらい左にズレただけで、第1コーナーを向いたまま、加速を続ける。そう、それだけで、十分なはずだった・・・。

<つづく>