洗車 2/2

高圧洗浄機に頼るでもない、陽射しの揺らめく中、こうして両手を使ってマシンを泡立たせるのは、何年ぶりになるんだろう・・・。ducatiからktmに乗り換えて、オフロードマシンばかりが集う我が家。モトクロッサーを手に入れてからは洗車もすべて“ジェット噴射”、手が吹き飛ばされるような水流で汚れを洗い流すようになった・・・あれから10年、ようやくキャストホイールを履いたマシンが戻ってきた。モトクロスの合間を見ては、晴れた日ばかりを狙って日帰りツーリング。たまにryoと2台で赤城や榛名へ走りに行っても、当たるのは通り雨ぐらい。高圧で洗い流す汚れがつくはずもない。それでも、さすがに一週間も旅に出ていると、原色でさえ色がくすんでくる――。

雨でくすんだ樹脂製の部品は、白い泡に包まれながら、見る間に色を取り戻していく。もう一度、ホースで水をかけていくと、タンクカバーが鮮やかに光り始めた。gromの黄色は、ナノハナのそれよりも少し色が深い。コンクリート敷きのカーポートも、そこだけ華やいでいる。見ていると元気が出るからいい。乾いた雑巾に持ち替えて、車体のあちこちに散らばっている水滴をふき取っていると・・・ちょっと力を入れすぎて、タンクカバーが一瞬ペコリと凹んだ。すぐにまた元に戻ったけど、指の先に触れる感触も、やわらかで、どこかのっぺりしている。ここから先、固形のワックスで艶を出そうにも、下手をするとサメ肌にするだけになる。樹脂製のカバーに少し悲しくなって、金属の冷たい触感が恋しくなった。