Riding high! 5

MX408のフープスの上でさえ、クラッチレバーに指はかかったまま。少しでも加速が鈍れば、すぐにレバーを引いて半クラッチを当てる悪癖だけど、役に立つこともある――全開で吹けあがっていたエンジンが、無意識に握り締めたクラッチレバーの上に、2スト85ccの不規則で弱々しい鼓動を伝えてきた。ふたつのヒザを折り曲げるようにして、急いで半身を起こす。そこから左脚を踏ん張って、KXごと立ち上がる。テーピングで固め過ぎた左ヒザは“無傷”、痛くも何ともない。右手でスロットルを全開にあおり、少し緩めた左の2本の指に、KXが走り出した。あわててシートに飛び乗り、ステップに足を戻すと、一瞬閉じたスロットルを動かなくなるまで捻り上げる。ゴーグルの奥に、第1コーナーから上り坂へ群がるマシンが映った。ひとつの塊のまま、まだイケる――アタマにSUGOのシケインから押しがけでコースに戻る北野晶夫が翻った。1本しかないKXのサイレンサーからも、白く細い煙がたなびいているような気がした。

鼓膜の奥の、そのまたずっと奥のほうから、“Riding high”のリフが響いてきた。ギヤを上げて、近づく第1コーナー。そのイン側にマシンが2台、重なるように倒れているのが目に入った。手前で横になっていたのは・・・#21、ryoのCRF150RⅡだった。

<つづく>