焼け付く寸前、ギリギリのところで 2

カムシャフトやらバルブやら、余計なものをまったく持たない2ストロークエンジンは、回転の上昇がやたら速い。胸をすくような、時に恐怖さえ覚えるこの感覚は、いつしかカラダに染みついて病みつきになる。あちらこちらに2ストジャンキーが生まれるのも仕方がない。今はもう、こうしてモトクロッサーでしか味わえなくなってしまったけれど、かく言うワタシもその一人だ。そして、このエンジン、濃い目よりも薄目の方が気持ちよく吹け上がるクセがある。ホントかウソかはわからないけど、昔から「焼け付く寸前、ギリギリのところ」が一番おいしいと言われている。市販車の宿命を背負わされた国産のマシンは、どんな乗り方をしても焼き付かないように、ほとんどすべてガソリンが濃くなるように設定されている。だから、物知り顔の連中は、混合気が薄くなるように、どんどんジェットを絞っていく。まるで何かに取り憑かれたように。

<つづく>