焼け付く寸前、ギリギリのところで 3(完)

それも度が過ぎると、ただただブン回るばかりで、まったくチカラの出ないエンジンに仕上がってしまう。空吹かしすると、厚みのない軽い音が空へと抜けていき、タコメーターの針をビュンビュンと動かしてみせる。ただ、平らな道では苦もなく吹け上がるくせに、ちょっと勾配がついてくると、とたんに回転が上がらなくなって、下手にスロットルを開けようものなら、大きく失速してしまう。なんてことを、rz250に乗っていた頃に、よく経験したものだ。わずかなレースに疲れた左ヒザは、まさにそんな見かけ倒しのエンジンにそっくりだ。駅までの平坦なアスファルトを軽やかに蹴っているから「これは調子がいい!」と思っていたのに、ちょっと負荷がかかっただけで、だらしなく崩れてしまう。からっきし意気地のないヒザに手のひらを当てながら、「セッティングで直るわけじゃないけどな」とひとりごつ。MX408が消えてしまうのと前後して狂い始めたワタシのヒザは、いくら待っても完璧なセッティングが出ることはない――か。