Ready to Race!? 3

先週の日曜日と代わり映えのない、ゆるんで荒れた褐色。その上に、生々しいワダチが何本も刻まれている。夜半に川越周辺を襲ったゲリラ豪雨が、青い空の下、オフロードヴィレッジにもいくつか大きな水たまりを残していた。

スタートしてすぐの第1コーナー。ぬかるみを避けたつもりのアウトバンクでフロントタイヤをすくわれ、思わず左足を地面に着かされる。SIDIのブーツが足首まで埋まって、ようやく固い土に止まった。傾げたマシンとカラダを左ヒザが何とか支えている間に、2速半クラッチのKX85-Ⅱが、重く湿った泥をかきむしりながら、続くテーブルトップジャンプの斜面を、前と後ろのタイヤをバラバラに当てて上りはじめる。フロントタイヤが外に向いたまま、坂からこぼれ落ちそうになるKXをなだめすかして乗っかったテッペンには、まっすぐなのに、なぞろうと走るタイヤを弾いてはらうワダチが、いくつも線を引いて待っていた。

15分の練習走行で3周回るのがやっと、乾いたときの倍をかけて走るのも無理はない。モトクロスではなく、もはやエンデューロ。もう1周走れと言われていたら、すっぱりあきらめてパドックに引き上げたはずだ。無駄にチカラを込めていた二の腕が、鈍く痺れている。「転ばず止まらず」、レースに勝つには、そんなことしか思いつかない。泥だらけで重たくなったKXが、勝負所と覚悟していた8連ジャンプの脇を過ぎ、bongoのところまで帰っていく。レースまでに乾くとはとても思えなくて、初秋の青い光がまぶしく、かえって恨めしかった。茶色く汚れたマシンの向こう、その光の中になつかしい笑顔がのぞいていた。

<つづく>