秋晴れ!

夕べから差しておいた充電器の端子を外して、dukeをガレージから外へ出す。特徴的な橙色が、光の中、よく映える。KX85-Ⅱで福島の山の中を走っていたはずなのに、ちょっとした手違いで行けなくなってしまった。昨日の空なら、それでもまだ我慢できたけど・・・今朝はもうダメだ。どこに行く当てもない、ただ、じっとしていたら間違いなく後悔する日曜日。クシタニのカントリージーンズを止めて、夏にしか履かないトゥエンティナインのデニムを選んでみた。足を入れると、アラミド繊維のざらりとした感触がヒザにこすれる。合わせたのは着古したトレーナー、袖の橙色がdukeにはぴったりだけど、袖口はゆるく隙間だらけ、もうずいぶんくたびれている。フルフェイスに革のグローブを突っ込み、タンクの上に載せて、イグニッションを回す。セルボタンを押すと、一瞬でエンジンに火が入った。

路地からバス通りに出て、右手を深くひねる。わずか200ccしかない4ストローク単気筒エンジンは、何があっても人の前にでしゃばることはしない。流れ出した景色を横目に、6速までシフトアップ。袖と手首の間から空気が這い上がっては背中から抜けていく。首筋に当たる風がちょっぴり冷たいけど、光と風はうまくバランスしていた。白いでも青いでもない、淡い水色をした空が、目の前に丸く広がっている。旅客機の機影が光に消えてしまいそうな小ささで、そのはるか彼方を水平に横切っていった。車列の尻尾に追いついても、真夏のように澱む空気にイラつくこともなく、後ろについてだらりと走る。前を走るクルマがいなくなり、切符の色が気にかかるような速度まで上がると、さすがにカラダもココロもひんやりしてくるけど、ひとたび信号につかまれば、注ぐ光が再びデニムを熱くする。

街路樹も、道端に生えた雑草も、まだ緑に光っているのに、金木犀の濃くて甘い匂いが風に染み出している。半袖で走るには涼しいけど陽射しはたっぷり、ぺらぺらのトレーナー1枚がいい感じに風を切る。こんな晴れて乾いた休日、そうあるもんじゃない。