H2R 前編

聞けば、真っ先にKawasakiが思い浮かぶ。そして、2ストロークマシン750SSの山吹色したガソリンタンクと、3本マフラーの吐き出す排気音が記憶の中で像を結ぶ。もう何年もモトクロスを続けているのに、モトクロッサーを引っくるめたバイクというものに、ほとんど関心を見せないryo。そのryoが、めずらしく自分からバイクの話を振ってきた。「ねえねえ、H2Rって知ってる?」と。そんな名前のマシンを、帰り道の書店で見てきたばかり。それでも他の工業製品と聞き違えていないか、「H2R?kawasakiの新型だろ?」と念を押す。その一言に、こちらに顔を向け、「そうそう。やっぱ知ってるんだ」と、うれしそうに口元を緩ませた。

<つづく>