だからバイクはやめられない

日付が変わるまで降り続いていた雨も上がり、朝から晴れ上がった日曜日。買い物と面倒な用事を済ませるのに、ガレージからdukeを引っ張り出した。3ヶ月ぶりに表に出された橙色に、あのときと同じ眩い光が宿る。予報どおりの晴天、濡れた大地が陽射しを浴びて、ロングスリーブのTシャツが邪魔になる。カーキ色のパーカーはリヤバッグに押し込み、イグニッションを右に倒してセルボタンに親指をかける。トゥルルルッと、200ccの単気筒はすぐに目を覚ました。暖気もそこそこにaraiのrapideをかぶり、thorのグローブを手にはめる。左ヒザを捻らないように、avirexのソールをコンクリートの上ですべらせながら、右脚をシートの反対側に渡らせる。右手でスロットルグリップを回せば、くぐもった破裂音が乾いた空気に向かってはじき出される。太った膨張室から、思い切り口径の絞られた出口へと流れる排気が、他の単気筒では聞くことのない、dukeらしい音を奏でる。クラッチレバーを握り、左足でシフトペダルを踏みつけ、足を乗せ変えてから、右手でスロットルグリップを捻ると同時にもう一度クラッチレバーを、今度はゆっくりと開いていく。リヤサスペンションが一瞬、ググッと路面を手繰り寄せるように縮んでから、橙色の車体ごとワタシのカラダを押し出す。転がり始めた両輪が均衡して、重力から解き放たれる・・・。