曇天

真新しい一日は、雲にすっぽり包まれて、灰色だった。光が無ければ陰も無い。降るでも照るでもない曇天はどうにも苦手、おまけに今朝は冷え込んだから・・・携帯のアラームを止めるのも、掛け布団を払うのも、ベッドから起き上がるのも、始まりのすべてが億劫になった。そして、階段を降りるのも、顔を洗うのも、新聞をめくるのも、朝のすべてがゆっくり動いていく。それでも時間だけは変わらず過ぎてゆき、2杯目のコーヒーを啜る前にもう、家を出る時刻がやってきた。革靴を二度履き損ね、まだぼやけたカラダは、外に出るのを嫌がっているようだった。

色のない街並みが空と同化して、静かに車窓を流れていく。その灰色を見るとはなしに眺めていたら、雨の日に決まって学校を休んでいた同級生が居たことを、ふと思い出した。母親しかいないからだとか、家が貧しいからだとか、今思えば、ずいぶん乱暴で身勝手な大人たちの言い分を黙って聞いていたけど・・・案外二人して、雨が億劫なだけだったのかもしれない。天気予報は、昼には冷たい雨が落ちてくると言う。億劫な一日を過ごすくらいなら、このまま長津田まで行ってしまおうなんて本気で思えて・・・今なら、その同級生とも、仲良くできる気がした。

目を閉じると、小さな背中が、ランドセルを重たそうに乗せて、板塀の路地を小走りに消えていった・・・。