秋の菜の花

関宿から春日部へ。古びた橋梁の上、dukeとともに江戸川を渡る。平坦にまっすぐ延びたアスファルト。その正面に、庄和の大凧を飾る大きな建屋が、目線の高さに降りてきた夕日を背に黒く浮かび上がる。ほんの30分前、肩口に触れていた陽光は暖かさを宿していたのに・・・今はもう眼を細めるまぶしさだけで西の空を橙色に染めている。ロンTにアウトドア用のパーカーを合わせた上半身は、腹の辺りが冷たく固まり、ステップから脚を外すと、左ヒザがコキッと音を立てる。風が変わって、それまで緩んでいた空気がキュッと締まる。晩秋の宵は、駆け足で下りてくる。家まで5分、急ぐ視線の先に、まだ完璧な黄色になりきれないイチョウが一本、幹の近くに鮮やかな緑色を残して曲がり角にたたずんでいた。やわらかに消えゆく光に照らされた黄から緑の階調は、秋の日の菜の花のようだった。