南の島の彼女

幌布のショルダーバッグに収まる文庫本は、暑く湿った夏の匂いを伝えてくれる。南の島で、傷ついた恋心を癒す放蕩女子。バリ島の人と自然に溶け合う日向な感じと、自由なのに繊細な陰のある雰囲気が、知り合いの姿にうまく重なる。昨日までの冷たい雨も、陽気なkissサウンドで耳をふさぎ、パーカーのフードを立てるように包まって、短文で綴られたページを繰れば・・・さっと遠くに、見えなくなった。

冬に向かうこの時季でも、温い湿り気がカラダにまとわり付くよう。大きく息を吸い込めば、肺の端から端まで、細かな水滴がひろがる気分になる。さすがに明け方、夢の中で文句を言われると思わなかったけど・・・彼女には、褐色の肌に潮灼けの長い髪がよく似合う。怒られたことは黙って、明日の夜はまた、そんな南の海の話を聞かせてもらおう。少しだけ口の悪い、熱帯安楽椅子に腰を落とした女子に。