光と緑と

松伏を縦に突き抜けて、県道が南に走る。午後になって少しだけ西に傾いた太陽に、かかる雲はひとつもない。県道の先が見えなくなるまで裸の水田がまっ平らに広がって、銀杏もなければ県の木“けやき”も見当たらない。短く刈られた稲穂から新緑が針のように立ち、光の下でつやつやと風にそよいでいる。

すっかり晩秋なのに、窓の外は光にあふれて、空の端には霞がただよう。小川にかかる橋をまたいでいくと、土手も小さな緑に覆われている。細く開いた窓から流れる風もあたたかく、どこかやわらかに頬をなでていく。今にも菜の花が、小さく黄色を花開かせてしまいそうな小春日和の中、黙って南に下る。

新しくできた国道に出て、大げさに川を渡ると、橋の上から遠く霞んで、634mの電波塔が空に溶け出していた。