12月

宵の空が割れて、藍色に月が浮かぶ。

だらしなく空気を濡らし、歩道に敷かれたアスファルトに気まぐれな黒い染みを付けていた空。白い絵の具を派手にパレットへ吐き出して、その横に、チューブの腹を押してほんの少しだけ、黒い絵の具を落とす。それから右手に絵筆を携え、いつまでもくどいほど、ぐるぐる回して白に黒を混ぜる。そのまま空いっぱいに、できあがった鼠色を薄く引きのばせば・・・絵心のないワタシでも、今日の空は簡単に再現してやれる。朝のけだるい湿度と、午後から吹いてくるはずだった南風。お天気お姉さんの笑顔にほだされ、bongoの助手席にパーカーを置き去りにしたのに、南からの風は届くことなく、湿り気も流れず、色のない空の下で最後まで、肩をすぼめて歩く破目になった――。

帰り道、見上げた空に鼠色の雲がちぎれ、その端からは真っ白な月が覗いていた。明日は乾いた青空が望めるかもしれない。遅れている“造成”も順調に進んでくれるといい。東に瞬く星に向かって、そっと瞳を閉じる。