ウルトラマンダイナ 2
「先生、それってどういう・・・」
ヒザの症例に詳しいと紹介された年若の先生は、ドラマで観るような濃紺の制服に身を包み、丸椅子の上で微笑みかけるように教えてくれた。丁寧に、手のひらに収まるヒザの模型を指差しながら、
「これ、前十字靱帯って言うんですが、これが大腿骨の方で切れちゃったんですよね、きっと。それで、その切れ端が、どこかに貼り付いているんじゃないかと思うんです。だから、立っているときはうまいことグラつきが少ない。でも、こうして膝を深く曲げると・・・かなりグラグラしているんですよ」
要するに、切れた靱帯が、手近な骨に癒着して仮初めにくっついている――それが今のワタシの左ヒザ、何かあると簡単に「やっちゃう」らしい。矢継ぎ早に先生曰く、
「捻ったりするのは良くないですよー。それと・・・ジャンプの着地ですか、これもかなり衝撃があるので・・・ヘンな方向にチカラが入ると危ないですねー。ヘタをすると、やっちゃうかもしれません」
「・・・って、気をつけようがないんですけど・・・脚、とっさに出ちゃうんで・・・」
「まあ、そうですよねー。でも、それは仕方がないと思いますよ」
先生は、どこまでも明るく元気に答えてくれる。そう、うれしいほどに。
「やっちゃったら、痛いですか?やっぱり」
「最初にやっちゃった時の、だいたい4割ぐらい?そのぐらいの痛みだと思ってください」
どうやら骨を折ったり、肩を外したりするよりは楽なようだ。
「あとは手術するかですけど、正直微妙な状態です」
「はぁ・・・」
中途半端に機能している、左ヒザの靱帯を言っているらしい。
「これを、完全にやってしまうと・・・自覚症状も出てきますからね。でも、今は自覚症状ないでしょ?」
「はぁ・・・」
「普通にしているときは、ほら、膝ってそんなに伸びないんですよ。だから、よくわからない。ただ、深く曲げてから動き出すときは注意してくださいね。あと、急な動きも良くないですからね」
「そうですかぁ・・・」
「止めなさい」と言うほどではないのかもしれない。だけど、モトクロスの動きが良くないことは、しっかりと伝わってきた。それでも白いマスクの上、蛍光灯の光をやさしく映す先生の瞳は、「まだ大丈夫ですよ」と言ってくれているような、そんな気がした。でも・・・。
<つづく>