Last race 3

<12/5の続き>

第1コーナー。先行するCRFの軌跡をなぞり、左へターン。テーブルトップと、続くステップダウンを高く跳び上がると、ゴーグルに映る後ろ姿が、少しだけ大きくなった。右に大回りして、リズムセクションの最初のコブを、半端な勢いで蹴り出す。結局ここは、最後まで思い切れなかった・・・コースの外、コンパネの向こう側で大きく手を振るなじみの顔に、一瞬、瞳を閉じる。それでも、ここまでくじけず踏ん張ってくれている左ヒザのためにも、このまま引き下がるわけにはいかない。ひどく波打つ上半身を、かまうことなくハンドルバーに伸ばした両腕で支えて、前を向く。セクションの終わりにおかれたテーブルトップを跳び上がらないよう、踏み込んだブレーキペダルに、痺れた右手でフロントブレーキをかぶせる。

すぐに逆さまになって落ちる斜面からタイヤが離れてしまわないように、チカラを入れすぎてタイヤがロックしてしまわないように、そして、アウトにはらんでしまわないように・・・レバーにかけた人差し指と、ペダルに触れたつま先をふるわせる。後を追う#0のCRFは、その先“スプーンカーブ”の真ん中で、もぞもぞと動いていた。

<つづく>