Hard to say 1/2

窓を鳴らす強風に、約束された青い空。冬至を過ぎても、まだ低い軌跡をたどる太陽が、建物の影を長く伸ばす。三日目にしてようやく手に入った、この時季らしい乾いた晴天。当てがないのは昨日と変わらないけど、「四つ輪」には飽きた。昼が近くなれば太陽も南の空にのぼり出して、風に冷たくなった頬が、陽射しに触れて熱っぽく緩む。そして、相棒に選んだのは、GROM。ガレージの中のdukeは、今や市販レーサー張りの“押し掛け専用”、昨秋から上がったバッテリーがそのままになっている。寒空の下、4ストシングルがうまく反応するとも限らないし・・・ここは世界のHONDAに頼むしかない。

空冷4ストロークSOHC単気筒は、HONDA伝統の横置き。スーパーカブと同仕様だ。わずかに125ccしかない排気量で、我が家のマシン群にあってはもっとも非力を誇る。腰の辺りでフラフラとゆれる小さな車体は、それでも一番の遠出を経験済みで、昨夏はryoとともに、北の大地を走り抜いてきた。HONDAらしく調整の行き届いたインジェクションと相まって、エンジンは “セル一発”で始動、静かな鼓動を刻み始める。3層構造になった冬用デニムの上からオーバーパンツをかぶせ、着古したゴールドウィンのウインタージャケットに腕を通すと、首から下に体温が閉じ込められて、寒さの感覚が一瞬遠くなった。

<つづく>