Doctor doctor, please

開いた茶色の引き戸、その内側に薄い花色のカーテンが半分ほど引かれている。風もないのにやわらかなひだがそよいで、縦に長い部屋が現れた。そのなかで円いイスに座ったまま、机の上のパソコンに相対している横顔。真っ黒な短い髪が、卵の容をなぞるように曲線を描いている。淡い緑色のビニールレザーが張られたソファに腰を下ろして、まっすぐに伸びた背中の線を瞳にしまう。

照れ隠しに姿の見えない左のソファへ移動して、名前が呼ばれるのを待っていると・・・先生の方から、待合室に出てきた。こんな日に限って、座っているのはワタシだけ。「今年もよろしくお願いしますね」、にこやかな口元で、軽く腰を折りまげる女先生。いくら良くならないといっても、お医者さんにそうお願いされるのも・・・ちょっと複雑な心境だ。

走り納めで音を上げた左ヒザを診てもらいたかったのに・・・年末年始の間にすっかりむくみも取れて、半月板の収まりもよくなってしまい・・・走った翌日の有り様を、身振り手振りで説いて聞かせる破目になった。向かい合っても、その焦点はワタシの後ろに延びていく。まるですぐ後ろに、もうひとりワタシがいるように。すべてを見透かしているような視線。

この女先生にお願いできるのなら・・・もう少し乱暴に走っても平気かもしれない。