You are the wolf?

雪になると思っていたら、小さな暴風“雨”。雨は固く窓ガラスを叩き、折りたたみの傘を広げても、スーツの足元を濡らして逃げていく。ビルとビルの間からのぞく空が、生気のない灰色に塗られて、原色の彩りをひときわ光らせている。すぼめた肩にウールのマフラーを絡めて、とにかく帰り道の歩道を急ぐ。少し早めに地元の駅へ降り立つと・・・都心が暖かかったことを思い知らされた。

それでも、早起きならぬ早帰りには、うれしい“得”が待っていた。昭和53年、“羊”のような少年が心躍らせ聴いていた甘い旋律が、時を越えて今、目の前から流れている。37年前と変わらないといったらウソになるけど、きれいに歳を重ねたその人は、相応の艶をまとい、その日のようにデビュー曲を歌い上げる。照れくさそうに右手で、“狼”をつくるのも忘れない・・・。

「一緒になれるんだったら、すべて捨てちゃうよ」

いつだったか、この曲を聴かせながら歌トモに言った台詞に・・・ウソは無い。