Approach

受付に置かれたコンテナとフィニッシュテーブルの間を通って、KX85-Ⅱをまっすぐに走らせる。砂利の小道は、そのままM・X・4・0・8のパネルの方まで延びていく。サーキットで言えば、さしずめピットロード。ただ、湿ってゆるい路面には、コースから移ってきたように・・・深いワダチが、ゆらゆらとジグザグに走っている。コースの入口へたどり着くまでに、手首に向かった筋肉が固く盛り上がってくる。切り立った山肌の下まで来ると、それまでフラフラしていたKXが急に素直になった。

完全に凍った山砂が、日陰の中で白く浮かび上がる。右手に戻ってきた駆動力と目の前をふさぐ砂の壁。その壁に思わずフロントタイヤを斜めに乗り上げ、KXと一緒に小さく弧を描いて落ちてくる。広々としたスターティングエリアに立ち、KXを停めて左足を下ろす。ゴーグルのレンズの向こう、大きく右に回りこんでいく第1コーナーが、陽射しをたっぷり浴びて褐色にきらめいていた。