Tomahawk?

こうなりゃ後は、空を飛ぶしかないか・・・。

左ヒザの湯治をかねた週末の温泉宿。白く濁った湯船に立ち込める強い硫黄臭が、遠く離れた客室の扉をすり抜けてくる。湯上りの火照ったカラダを横に倒して、片手でスマホの画面をフリック。気になったポップアップをクリックして、キュレーションアプリを起動する。「世界最速のバイク」は隼だとばかり思っていたのに・・・時速676kmは、その隼の倍の速度。“音速”の0.55倍というのが凄みを利かせる。

V型10気筒のエンジンは、8000ccを超える排気量から推定500馬力をたたき出す。10年以上も前、デトロイトのショーで発表された狂気の市販車に、今になってようやく驚かされる。ヤマハのR1、ホンダのブラックバード、スズキの隼。国産3メーカーの“旗艦”のはるか上を行く、もはや“別格”のマシン。ただ、ノーヘルのダンディがまたがる画像は、普通に直線を流しているようにしか見えなかった。

Dodge Tomahawk。巡航ミサイルと同じ名前がついているのは偶然なのだろうか・・・。軽くて強い翼をつけてやったなら、あっさり空を飛び上がるかもしれない。でも、さすがに6000万円は出せやしない。せめて、隼を跳び越えていきそうなH2に直線だけでも乗ってみたい――硫黄の臭いが、ふっと鼻腔にひろがった。