Conservative or reconstructive

「ヒザの裏にある腱を1本、切り取って使うんですよ」

“掛け値なし”のスッピンに、大きな瞳がくるっと動く。

「それを、こうして二つに折って、切れた靭帯の代わりにするんです」

てっきり切れたところを縫い合わせるのかと思ったら・・・まさか自分のカラダで調達するとは。どうやら“再利用”はできないらしい。まあ、当たり前か。“縫い代”を考えたら、長さが足りなくなる。短く縫い付けてしまえば、グラグラするどころか、ヒザは深く曲がらなくなるそうだ。

「ヒザの上と下の骨に穴を開けて・・・その穴から、こうやって斜めに通したら、端をホチキスの針のようなもので骨に留めるんです」

その穴は時間とともにカルシウムで埋まっていき、代役の腱の方も、靭帯のような色味になっていくという。これがACLの再建術。リハビリの女先生が、やんわりと手術を勧めてくれる。

「こういう嫌な感じもなくなるし、スポーツへの不安がなくなりますからね」

ヒザがねじられて内側に入るような動きにも、昔のように耐えられる――そう言われると、心が揺れるけど、

「スポーツ復帰には、半年から10ヶ月くらいかな?術後ひと月ぐらいで、全体重をかけられるようになって、3ヶ月もすると、軽いジョギングもできるようになるんですけど・・・この1ヶ月と3ヶ月に、再断裂が多いんです」

“再断裂”という言葉に反応して、ストレッチ台に載っていたカラダが大きくふらつく。

半年は動かせなくなる・・・そして、下手をすれば、もう一度“切って”しまう。普通にしていれば普通に過ごせる左ヒザに、わざわざメスを入れることもない。いや、それでは、左カーブのたびに意気地のないコーナーリングを繰り返すことになる。どうにもならないほどの葛藤が、リハビリルームの中、しばらく続いた。