モボ・モガ

先週とまったく同じパターンで、夜の浅草、仲見世通りを突っ切って歩く。渋谷の喧噪とは違い、この街の宵闇は暗くて穏やかだ。ビルと坂に囲まれ、いびつな直線に切り取られた空には見えなかったスカイツリーが、ここからだと質感たっぷりに瞳の中、縦長に映り込む。二つのヒカリの輪を背中に感じながら、今日は伝法院通りを渡るように六区へ急ぐ。湿った昨日は据わりの悪かった左ヒザも、小走りするカラダに、うまく付いてきてくれる。一日中晴れていたからか、ずいぶん機嫌がいい。途中、六区通りに入ってすぐ、「モボモガ御用達」と白く書かれた、その妖しげな看板にまたしても心惹かれて、思わず足を止めてしまう。あの姐さんとなら、通りから細長く続いた先にある扉を開ける勇気が出てくるかもしれない・・・そんな妄想を胸にしまって、足下のアスファルトを強く蹴り出した。この二つの通りには、気になる“構え”が多すぎる。浅草も、まだまだ捨てたもんじゃない。