曇りのち雨 4

周りに何もない解放感に気を良くして、胸にかぶったガードをガソリンタンクに近づけながら、右手を絞る。フロントタイヤは宙に浮いたまま、第1コーナーが大きくなってくる。バンクが反り上がって、奥行きのある左のヘアピンには、まだ誰も見えない。3速でアウトバンクまで走り、力ずくで車体をねじっている間に、イン側のラインを素直に立ち上がる数台に・・・ヤラレた。

連続するジャンプを超えて第2コーナー。すり鉢の下で右に折り返し、ステップアップとロングテーブルトップの先の3コーナー。どちらもインをがら空きにしているから、2台、また2台と、まとめて交わされて・・・外周を回り終える頃には、すっかり後ろに下がってしまった。さらに、その先で右に折れてひと山乗り越えると、凸凹した直線が厄介に横たわる。

「コワクナイと言ったら・・・ウソになります」。くだらないことを口ずさみながら、ウォッシュボードの最初のコブに突っ込んでいく。口ではふざけていてもホントに怖いから、ひとつずつゆっくりといなしていくしかできない。ここでも“ゴボウ抜き”されて、あとはもう、2ストマシンの軽さを生かした空中戦しか残っていない・・・。

<つづく>