Rain Rainey 2

<4/8の続き>

浜松にある本社から、東京下町の営業所に配属されたあの日。あれからもう、倍の時間を生きてしまった。どんな天気でどんな手段で、どんな服を着てどんな時間に訪れたのか。今ではすっかり忘れてしまったけど・・・精一杯声を張り上げて、「おはようございます」と開いたドアの向こうで、光るいくつもの好奇のまなざし。値踏みされるようにつま先から頭のてっぺんまで、その光がなぞっていった瞬間だけは、まだ記憶の奥のほうに残っている。そして、そのまなざしの陰に、その人はいた。

<つづく>