奔放と天然と

ちょっと目を離した隙に“拾い喰い”をやらかしてから、いや、どちらかというと腸を切開するほどの大手術の費用を払わされてからというもの、夜陰に紛れてシロを放すことをしなくなった。家の裏手に回れば、そこはもう、植えられたばかりの苗が風にそよぐ田園風景。夜ごとカエルの声も大きく太くなり、すっかり茶色くなってしまった背中を見せるシロなら、そこにいることすらわからないほど暗く賑やかな情景が広がる。おまけに傷の癒えた今となっては、腹を切られた痛みも動物病院の冷たいゲージに置き去りにされたことも、消えてなくなっているはずだ。目に見えない傷痕とともに、しっかりと胸に刻みこんでいるのは、クレジットカードの支払いを「分割」にしたワタシのほうかもしれない。

そんな“天然系”のシロはもちろん、ひとたび“自由”だとわかると、呼んでも知らん顔のネロにも忘れずリードを着けて、夜の玄関を出ていく。月のない、生ぬるい夜気の中、我先にとシロとネロがグイッとワタシを引っ張る。たまらず悲鳴を上げて、左ヒザがぐらりと崩れた。この2匹を止めるだけのチカラが、今のワタシのヒザには出せないらしい。