アンバランス

気の早い5月の台風は、急ぐようにして東へ抜けていった。天気予報が言うとおり、夜半に激しく降りつけた雨も、寝入ってすぐに上がって、目が覚めたら太陽の照りつける朝になっていた。あれほどの雨も、渇ききった大地はあっさり吸い込み、アスファルトには、その気配さえ残っていない。見るとはなしに点けっぱなしのテレビから、しきりに「夏」と言う甘ったるい声が聞こえてくる。

まだ7時にもなっていないのに、太陽はもう、東の空高くにあって木々の緑を照らし、その葉の細かな輪郭を、黒く道端に刻んでいる。ただ、台風を追いかけるように南から吹く風は、そんな陽射しの強さに邪魔されることもなく、揺れる水面の田んぼの上を渡り、さらりとワタシを追い越して、爽やかに流れていく。ヒカリとカゼのちくはぐさは、初夏の兆し。この時季だけの、つかの間の不均衡が、とても素敵だ。