夏は夜

西の空、建物の陰に隠れてしまいそうな低さに、上弦の細い月が浮かんでいる。射るような昼のヒカリが消えて見えなくなって、漆黒の冷たい闇には、冴え冴えとした三日月が、よく似合う。その月の真横、弧の背中から少し離れたところで並ぶようにして、宵の明星が輝いてみせる。

金星、そして月から、斜めにすうっと線を延ばすように視線を動かしていくと、すぐに小さな星が瞬いて見える。太陽系最大の惑星、ジュピターだ。その大きさゆえに、極度の近視にも十分姿が届く。黒い天空にあって、白く輝く様は、おどろおどろした縞模様をもつ星とは思えぬほど、きれいだ。

今も昔も、夏は夜。粋を解さぬ賑やかな奴らでも連れて、そぞろ歩きに出てみますかね。