行き先は?

細いパープルの縦縞が入ったワイシャツに、グレーのスラックス。足下のアンバー色した6インチブーツだけが、かろうじて黄色いボディーカラーと釣り合っている。スーツ姿に着替えをすませてから、いつもより1時間遅く玄関を出る。引っ張り出したのはGROM。そのサイドカウルに、陽射しが強くはじける。濃紺のジャケットをブリーフケースにしまい込み、そのまま背中に背負ってから、メインスイッチをONに回してセルボタンを押す。トトトッと小排気量らしい排気音を響かせて、4サイクルシングルエンジンがアイドリングを始めた。フルフェイスのラパイドをかぶり、遅れた時間を取り戻すように、雑なクラッチミートで路地に飛び出す。リヤタイヤがギュッと鳴いて加速する125cc。湿った化繊混じりのシャツが、乾いた風に洗われ、首筋の汗がすうっと消えていく。バス通りに出て、法定速度を少し越えたあたりで流していると・・・夏日と春風がうまく釣り合って、シートの上は快適なクルージング。狭いキャビンの軽トラでは、こうはいかない。夕べ、寝しなに考えていた仕事の段取りも、遠くにぼやけて・・・仕事場に行くのが可笑しくなってきた。