少し待ってておくれ 後編

館山から国道410号線をたどってさらに南下、平砂浦まで降りてから道を左に折れて、ようやく帰路に向かう。雨は灰色の空からパラパラと落ちていて、間欠ではもどかしく、ワイパーを動かし続けるのもうるさく、中途半端に降り続いている。それでも白浜から千倉と南房総らしい岩礁を眺めて走るのは、気分がいい。鴨川の市街地を抜ければ、濡れたアスファルトにクルマはまばら。泳ぐにはまだ早くて、あいにく雨の季節。その海を独り占めできるのは、ボードを抱えた無邪気な連中だけだ。

年齢も性別も不詳、ウエットスーツをカラダに張り付かせたサーファーが国道を渡る。歩道には、雨に濡れるのもお構いなしに、Tシャツに短パンのカップルが、べったりとくっついたまま歩いている。どちらも褐色を通り越して、肌が焦げている。そういえば仕事仲間の姐さんも、ひととき、こんな色をしていたっけ。上でも下でも、休みを海で過ごす人たちは、みんな焦げた色で雨雲を笑い飛ばしている。新しいマシンを前に、「降水確率20%以上のときは乗らない」とうそぶくワタシの瞳に、その褐色が眩しく映る。

梅雨前線を縁取るように、県道から国道をつないで走るBONGO。その国道が海岸線を離れ、海にせり出した断崖目指して上っていく。横では低気圧を背に、荒れた海が白波を立てている。鈍い海の色に転々と散らばるサーファーたちの姿は、坂を登りきる前に見えなくなってしまった。丘に居ても濡れるのは一緒だから・・・彼らにとって今日は、案外“ベスコン”なのかもしれない。ふと、ガレージにおいてきたマシンに思いが至る。DUKEだけじゃなくて、こいつも手を入れてやらないといけないんだった。そう、本気で走る、その前に・・・。